食品製造業の「原価計算」入門——「売れているのに利益が出ない」を解消する4ステップ

なぜ原価計算が必要なのか

「売れているのに利益が出ない」「どの商品が儲かっているのかわからない」——食品製造業でよく聞く悩みの多くは、原価が正確に把握されていないことが根本原因です。

原価計算とは、製品1単位を作るのにいくらかかったかを算出する仕組みです。販売価格を決める・利益を管理する・ロスを減らすすべての基盤になります。

財務会計との違い

項目財務会計原価計算(管理会計)
目的外部報告(税務・決算)内部管理(経営判断)
対象期間月次・年次製品単位・ロット単位
頻度月1回以上製造都度・リアルタイム
主な利用者税理士・金融機関社長・製造責任者

食品製造業の原価3区分

原価は大きく3つに分けて考えます。

① 材料費(直接材料費)

製品に直接使う原材料・副材料・包装資材のコスト。レシピ(製造仕様書)と実際の使用量を照合することで「ロス率」が見えてきます。

  • 原材料費:小麦粉・砂糖・油脂・肉・魚など
  • 副材料費:調味料・添加物・コーティング剤
  • 包装資材費:袋・箱・ラベル・テープ

② 労務費(直接労務費)

製造に直接携わる人件費。時給×実際の作業時間で計算しますが、段取り時間・清掃時間・待機時間を区別することがポイントです。

区分内容原価への算入
直接作業時間製造・包装・検品算入する
間接作業時間段取り・清掃・機械整備製造間接費として按分
待機・教育時間原材料待ち・OJT間接費または販管費

③ 製造間接費(オーバーヘッド)

特定の製品に直接紐づけにくいコスト。製品別に配賦基準(製造時間・重量・売上高など)で按分します。

  • 光熱費(電気・ガス・水道)
  • 設備の減価償却費
  • 工場賃料・保険料
  • 間接人件費(工場長・品質管理担当)

製品1個あたりの原価を計算する手順

以下の4ステップで「1個あたり原価」を算出できます。

STEP1:レシピから材料費を積み上げる

製造仕様書をもとに、1バッチ(1回の製造ロット)に使う材料・数量・単価を一覧にします。ロス率(歩留まり率)を掛け合わせることで実際の使用量を反映します。

材料費の計算例(お弁当1個)
──────────────────────────────
白米(90g)     :  @15円 ×  90g ÷ 1,000 ×(1+ロス5%)=  1.42円
鶏もも肉(80g):  @42円 ×  80g ÷ 1,000 ×(1+ロス8%)=  3.63円
野菜類(合計) :                                         =  2.10円
容器・包材      :                                         = 18.00円
─────────────────────────────
材料費合計                                               = 25.15円

STEP2:製造時間から労務費を算出する

時給×作業時間÷製造個数で1個あたりの労務費を求めます。

労務費の計算例
──────────────────────────────
直接作業者 3名 × 時給1,200円 × 4時間 ÷ 300個製造
= 14,400円 ÷ 300個 = 48円/個

STEP3:間接費を製品に配賦する

月間の製造間接費合計を「製造時間」で割って配賦率を求め、製品ごとの作業時間を掛けます。

間接費配賦の計算例
──────────────────────────────
月間製造間接費:200,000円
月間総製造時間:500時間
配賦率:200,000 ÷ 500 = 400円/時間

当製品の使用時間:4時間 → 1,600円 ÷ 300個 = 5.3円/個

STEP4:製造原価と粗利を確認する

項目金額(1個)
材料費25.15円
労務費48.00円
製造間接費5.30円
製造原価合計78.45円
販売価格198円
粗利119.55円(粗利率60.4%)

原価管理でよくある落とし穴

  • ロス率を反映していない:仕様書通りの量で計算すると実態と乖離する
  • 包材コストを材料費に含めない:包材は原価の10〜30%を占めることも
  • 間接費を無視している:光熱費・設備費を除外すると原価が過小評価される
  • 価格改定後に原価を再計算しない:半年に1回は原材料単価を更新する

まとめ:原価計算は「儲かる製品を知る」ための羅針盤

原価計算を整備すると、「売れ筋だけど実は赤字」「地味な商品が一番利益貢献」といった実態が見えてきます。最初から完璧な仕組みは不要です。主力製品2〜3品から始めて、半年かけて全品目に広げるのが現実的なアプローチです。

原価計算の導入・見直しにお困りの場合は、お気軽にご相談ください。

上部へスクロール