なぜ原価計算が必要なのか
「売れているのに利益が出ない」「どの商品が儲かっているのかわからない」——食品製造業でよく聞く悩みの多くは、原価が正確に把握されていないことが根本原因です。
原価計算とは、製品1単位を作るのにいくらかかったかを算出する仕組みです。販売価格を決める・利益を管理する・ロスを減らすすべての基盤になります。
財務会計との違い
| 項目 | 財務会計 | 原価計算(管理会計) |
|---|---|---|
| 目的 | 外部報告(税務・決算) | 内部管理(経営判断) |
| 対象期間 | 月次・年次 | 製品単位・ロット単位 |
| 頻度 | 月1回以上 | 製造都度・リアルタイム |
| 主な利用者 | 税理士・金融機関 | 社長・製造責任者 |
食品製造業の原価3区分
原価は大きく3つに分けて考えます。
① 材料費(直接材料費)
製品に直接使う原材料・副材料・包装資材のコスト。レシピ(製造仕様書)と実際の使用量を照合することで「ロス率」が見えてきます。
- 原材料費:小麦粉・砂糖・油脂・肉・魚など
- 副材料費:調味料・添加物・コーティング剤
- 包装資材費:袋・箱・ラベル・テープ
② 労務費(直接労務費)
製造に直接携わる人件費。時給×実際の作業時間で計算しますが、段取り時間・清掃時間・待機時間を区別することがポイントです。
| 区分 | 内容 | 原価への算入 |
|---|---|---|
| 直接作業時間 | 製造・包装・検品 | 算入する |
| 間接作業時間 | 段取り・清掃・機械整備 | 製造間接費として按分 |
| 待機・教育時間 | 原材料待ち・OJT | 間接費または販管費 |
③ 製造間接費(オーバーヘッド)
特定の製品に直接紐づけにくいコスト。製品別に配賦基準(製造時間・重量・売上高など)で按分します。
- 光熱費(電気・ガス・水道)
- 設備の減価償却費
- 工場賃料・保険料
- 間接人件費(工場長・品質管理担当)
製品1個あたりの原価を計算する手順
以下の4ステップで「1個あたり原価」を算出できます。
STEP1:レシピから材料費を積み上げる
製造仕様書をもとに、1バッチ(1回の製造ロット)に使う材料・数量・単価を一覧にします。ロス率(歩留まり率)を掛け合わせることで実際の使用量を反映します。
材料費の計算例(お弁当1個)
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白米(90g) : @15円 × 90g ÷ 1,000 ×(1+ロス5%)= 1.42円
鶏もも肉(80g): @42円 × 80g ÷ 1,000 ×(1+ロス8%)= 3.63円
野菜類(合計) : = 2.10円
容器・包材 : = 18.00円
─────────────────────────────
材料費合計 = 25.15円
STEP2:製造時間から労務費を算出する
時給×作業時間÷製造個数で1個あたりの労務費を求めます。
労務費の計算例
──────────────────────────────
直接作業者 3名 × 時給1,200円 × 4時間 ÷ 300個製造
= 14,400円 ÷ 300個 = 48円/個
STEP3:間接費を製品に配賦する
月間の製造間接費合計を「製造時間」で割って配賦率を求め、製品ごとの作業時間を掛けます。
間接費配賦の計算例
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月間製造間接費:200,000円
月間総製造時間:500時間
配賦率:200,000 ÷ 500 = 400円/時間
当製品の使用時間:4時間 → 1,600円 ÷ 300個 = 5.3円/個
STEP4:製造原価と粗利を確認する
| 項目 | 金額(1個) |
|---|---|
| 材料費 | 25.15円 |
| 労務費 | 48.00円 |
| 製造間接費 | 5.30円 |
| 製造原価合計 | 78.45円 |
| 販売価格 | 198円 |
| 粗利 | 119.55円(粗利率60.4%) |
原価管理でよくある落とし穴
- ロス率を反映していない:仕様書通りの量で計算すると実態と乖離する
- 包材コストを材料費に含めない:包材は原価の10〜30%を占めることも
- 間接費を無視している:光熱費・設備費を除外すると原価が過小評価される
- 価格改定後に原価を再計算しない:半年に1回は原材料単価を更新する
まとめ:原価計算は「儲かる製品を知る」ための羅針盤
原価計算を整備すると、「売れ筋だけど実は赤字」「地味な商品が一番利益貢献」といった実態が見えてきます。最初から完璧な仕組みは不要です。主力製品2〜3品から始めて、半年かけて全品目に広げるのが現実的なアプローチです。
原価計算の導入・見直しにお困りの場合は、お気軽にご相談ください。