「HACCPはやっているけど、JFSって何ですか?」——取引先から突然、JFS-A/BやJFS-Cの認証取得を求められ、戸惑う食品事業者が増えています。
この記事では、HACCPとJFS規格の違い、そしてどの規格を目指すべきかを、食品事業者の実態に合わせて分かりやすく解説します。
そもそもHACCPとは
HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Points)は、食品の製造・加工工程において、危害要因(ハザード)を分析し、重要管理点(CCP)を定めて継続的に監視・記録する衛生管理手法です。
2021年6月より、日本国内のすべての食品事業者にHACCPに沿った衛生管理の実施が義務化されました。ただし、規模によって求められるレベルが異なります。
| 事業者区分 | 求められる対応 |
|---|---|
| 大規模事業者・と畜場・食品を製造する者 | HACCPに基づく衛生管理(7原則12手順) |
| 小規模事業者(従業員50名以下等) | HACCPの考え方を取り入れた衛生管理 |
JFS規格とは——法律の上の「任意認証」
JFS規格(Japanese Food Safety Management System)は、一般財団法人食品安全マネジメント協会(JFSM)が策定した、任意の食品安全マネジメント規格です。法律による義務ではなく、取引先要件や事業者自身の品質向上のために取得するものです。
JFS規格には3つのグレードがあります。
| 規格 | レベル | 主な対象 | 第三者審査 |
|---|---|---|---|
| JFS-A | 基礎 | 小規模・地域密着の食品事業者 | なし(自己適合宣言) |
| JFS-B | 中級 | 取引先から認証を求められる中規模事業者 | あり(第三者認証) |
| JFS-C | 上級 | グローバル調達・輸出対応が必要な事業者 | あり(GFSI承認規格) |
HACCPとJFS規格の違い——3つの視点で整理
① 義務か任意か
HACCPは食品衛生法による義務です。一方、JFS規格はあくまで任意の認証制度であり、取得しなくても法律違反にはなりません。ただし、取引先がJFS-B以上の取得を条件としている場合は実質的に必須となります。
② カバーする範囲の広さ
HACCPは主に「製造工程の衛生管理」に焦点を当てています。一方、JFS-B/Cは組織全体の食品安全マネジメントシステム(FSMS)を対象とし、経営者のコミットメント・トレーサビリティ・アレルゲン管理・内部監査・供給者管理など、より広範囲をカバーします。
③ 取引先への証明力
HACCPは義務であるため「やっていて当然」と見なされます。JFS-B以上の第三者認証を取得していると、「義務以上の食品安全管理を実施している」という証明になり、取引先の審査や新規取引開拓において強みになります。
どの規格を目指すべきか——判断の目安
- HACCP(義務対応のみ):地元・地域内のみで取引し、当面は現状維持で十分な場合
- JFS-A:HACCPを整理しつつ、食品安全の基礎を体系的に固めたい小規模事業者
- JFS-B:大手スーパー・食品メーカーとの取引を拡大・維持したい中規模事業者。取引先からJFS認証を求められているケース
- JFS-C / FSSC22000 / SQF:輸出対応、または国内の最大手との取引で求められる場合
JFS-B取得の現実的なステップ
JFS-Bの取得に向けては、一般的に以下のステップで進めます。
- 現状のギャップ分析:JFS-B規格の要求事項と、現在の自社の管理状況を照合し、対応が必要な箇所を洗い出す
- HACCPの見直し・文書化:既存のHACCP文書をJFS-Bの要求水準に合わせて整備する
- 追加要求事項への対応:アレルゲン管理・トレーサビリティ・内部監査制度などを構築する
- 内部監査の実施:第三者審査前に自社で規格適合状況を確認する
- 第三者審査(登録認証機関):JFSMが認定した認証機関による審査を受け、認証取得
取得までの期間は準備状況によりますが、専門家の支援を受けながら進めると6〜12ヶ月程度が目安です。
まとめ
HACCPは食品事業者の「最低限の義務」、JFS規格は「その上の証明と競争力」と整理するとわかりやすいでしょう。取引先からの要求がなくても、食品安全の水準を高めることは、事故リスクの低減と顧客からの信頼獲得に直結します。
JFS規格への対応や、自社の現状とのギャップ確認についてご相談を希望される方は、お気軽にお問い合わせください。